映画「TOKYO タクシー」と原作「パリタクシー」の違いはどこ?

勝手に映画紹介

何気なく乗車するタクシーという密室空間。
時に自分の人生を、見知らぬ誰かに打ち明ける場にもなりえます。

私も仕事が終電の時間では終わらず、なけなしのお金で長距離タクシーに乗り、タクシー車内で運転手さんにポツリポツリと事情を話すうちに、数々の人生ドラマを聞いた事があります。
乗車前は見知らぬ者同士だった方との、優しい人生の通過点。

原作「パリタクシー」はそんな“偶然の旅”を切り抜いた名作であり、日本版リメイク「TOKYO タクシー」は、その精神を受け継ぎつつ、東京の匂いと日本的な情緒を山田洋次監督の魔法で珠玉の物語に昇華された作品。

今回はどちらかを観ようか悩んでいる方の何かヒントになればと思い、二つの作品を速攻で観た私の視点ですが、その違いを、ストーリーの構造や人物設定、演出の観点などから紐解いてみました。

結論から先に書くと、同じ筋道を通ったストーリーが、私には違うそれぞれの味わいを持つ別の二つの感動作品でした。

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パリタクシー

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映画「TOKYO タクシー」と映画「パリタクシー」の作品概要

映画「TOKYOタクシー」

山田洋次監督

(『幸福の黄色いハンカチ』(77)、「男はつらいよ」シリーズ、「釣りバカ日誌」シリーズ、「武士の一分」(06)など)

運転手:宇佐美浩二役 木村拓哉さん
お客様:高野すみれ役 倍賞千恵子さん

映画「パリタクシー」 

クリスチャン・カリオン監督

(『戦場のアリア』(05)、『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』(09)、『戦場のブラックボード』(15)など)

運転手:シャルル役 ダニー・ブーンさん
お客様:マドレーヌ役 リーヌ・ルノーさん

結論:どちらから先に観るか

先に結論から書きます!両方観るとすっごく面白いです!

今回これを書いている私自身ももう一度、この2作品を見直してみたいと思う程奥深い作品でした。

どちらを先に観るか、悩ましいですよね?
私の個人的なお勧めは「TOKYOタクシー」を観てから原作の「パリタクシー」を観る事。そして!肝心なのは、このブログのここから先は、観る前には読まないで下さい(面白さが半減してしまう!!!)

是非、「TOKYOタクシー」と「パリタクシー」を両方観てからお読み頂けたら幸いです。
どうしても先に知りたい方だけ、ここから読んで下さいね。

ストーリー構造:冒頭から少し違う

映画「TOKYOタクシー」では、木村拓哉さん演じる主人公宇佐美浩二の家庭事情が表現されます。
父である事、そんなに裕福でない事、お金が必要でその為に大切な物を手放さなければいけない寸前である事。

「パリタクシー」ではシャルルの家族はだいぶ経ってからでないと登場しない。
家ではなく、車内の様子や電話での会話で少しずつ生活の背景が説明されます。

運転手が行き先を知らない巧妙さ

「TOKYOタクシー」「パリタクシー」でもストーリーの肝は最初はただのおしゃべりな高齢者のお客様に仕事だから付き合っているという風に主人公は無関心で上の空。うわべだけの会話をしているという雰囲気満々です。

そこに、「TOKYOタクシー」は運転手が「行き先を知らない」というボタンの掛け違いに乗客側はどうせ「年寄りの私の事なんて馬鹿にしてるんでしょ?」という印象を抱く。

しかし、この少しのボタンの掛け違いがこの高齢者の乗客の人格が出るフックになっている。
人格者でなければもしかしたら不貞腐れて無言で終わりそうな最後のドライブも、この高齢者の懐が深く、そのおおらかな人柄で自ら自分の事を先に包み隠さず話していく。
その事で徐々にドライバーの心が紐解かれ、表情が本当にどんどん変わっていく。
この運転手の態度の変わりっぷりがとっても面白いです。

警察に止められるシーン

両作品共に、交通違反でタクシーを警察に止められます。

「TOKYOタクシー」では、すみれがドライバーを甥っ子だと話。(従兄弟の子供だったか?すみません記憶がおぼろげです)
自分は死ぬかもしれないと直接警察官に話す。

「パリタクシー」は、この前にもう切符を切られたら仕事を失って一貫の終わりという冒頭の前置きがあって、ここではシャルルは慌てふためくがマドレーヌが後部座席に女性警官を呼びヒソヒソ話。
うまく話をつけてくれる。この描き方も違いました。

旦那のとっちめ方も違う

すみれとシャルルの過去の回想も少しずつ違いました。

そして、肝となるのが若き日のすみれが、DVめいた旦那をとっちめる方法と若き日のシャルルが、旦那をとっちめる方法もすみれの手法が全然違う。どちらもとっても怖いです。

これは観た方は度肝を抜かれたと思いますが、私もとってもびっくりしました。
あえて書きません。

息子の生い立ちも違う

すみれとシャルルにはそれぞれ息子がいるのですが、その生い立ちが違います。
ここは映画的にとても重要なので、あえて細かく書きません。

その生い立ちによって、すみれとシャル、それぞれのその後の人生も変わってきます。
そして回想で出てきた息子さんの現在も、「TOKYOタクシー」「パリタクシー」で違います。

タクシーの中だけの話と思ったら味気ないと想像するかもしれないですが、壮絶な人生をおくってきた一人の女性の人生のクライマックスに付き合うと思ったら、こんな瞬間はなかなかないですよね。

最後、高齢者施設に着いた後の対応が違う

★ネタバレあります★知りたくない方は読まないで。

ここが「TOKYOタクシー」と「パリタクシー」で決定的に違います。

両方共にお金を払うのを忘れて扉が閉まってしまう。そして彼女が「ごめんなさいお金払い忘れてしまった」となる。この流れは同じでですが、

決定的に違うのは、「TOKYOタクシー」ではもう一泊ホテルに泊まりたいとわがままを言うと、キムタクが「ダメです」と一喝するここが肝でした。
この出来事がある事で、ずっと宇佐美浩二の中でこの言葉が後々の最後まで後悔として心に残っている。

だから同じような失敗をした事がある観客の涙を誘う。

「分かる、こういう状況あった」と私自身も実の母親に怒ってしまった一言を今も後悔している出来事を思い出しました。二度と戻らない言葉、謝れない出来事だからこそ、深く主人公の心そして観客の心に残る。すごい構成です。

後半の展開が少し違う

当日に代金も貰わなかった翌日のシーンも違います。

「パリタクシー」では、乗せた女性がすごい女性活動家であった事を奥さんが見つけたパソコンのアップから入ります。そして二人がそれについて話す。

一方で、「TOKYOタクシー」では奥さんがネチネチとなぜそんな高額の代金をもらってこなかったのと怒っている。これ、こうやって書くと奥さんひどいって感じるかもしれないですが、現実だったらそうですよね。

通常タクシーのお客さんは一度しか乗せない二度と会わない関係性なんてその乗車時間内だけというのが常識。お代を頂くからサービスをする間柄な訳です。お代は後日でいいと思ったのはこのドライバーの良心で、人柄。

その後、施設に会いに行くとこの老人は亡くなっていて、それに驚き施設の方が止めても「どうしても妻をマドレーヌに会わせなくてはならない」とお部屋に上がっていくというのは同じ。

ここで色々調べて分かったのが、これは「パリタクシー」で運転手をシャルルを演じたダニー・ブーンさんのアドリブだったそうです。

原作「パリタクシー」はモデルのいないフィクション

この物語は、物語は完全に創作されたものでモデルはいずクリスチャン・カリオン監督のオリジナルのようです。

2022年リーヌ・ルノーさん(94歳)は、タクシー運転手を演じたダニー・ブーンさんのご紹介で知り合われたようで、この作品が最後の作品となったようです。

メインキャストお二人の過去共演作について調べてみた

リーヌ・ルノーさんと、ダニー・ブーンさんのお二人は映画『戦場のアリア』で共演されていて、そして、なんとダニー・ブーンさんはご自身でも映画を監督されている、それが凄い本格的な映画「フランス特殊部隊RAID」で驚きました!

リーヌ・ルノーさんが出演することを条件にダニー・ブーンさんはこの作品を受けたようです!お二人の結束力が映画のなんとも言えない関係性を見事に出していますね。

倍賞さんと木村さんの共演は、スタジオジブリ映画「ハウルの動く城」(2004年)以来21年ぶり。倍賞さんは山田監督とは19年「男はつらいよ お帰り 寅さん」の後、6年ぶりだったそうです。

過去作品も気になりますよね。

映画『戦場のアリア』や映画「フランス特殊部隊RAID」、スタジオジブリ作品は2025年12月現在配信サービスでは見られないようで、宅配レンタルサブスク【TSUTAYA DISCAS】でレンタルできるようですので、もしチェックしてみたい方はこちらから↓

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結論:映画「TOKYOタクシー」の脚色にしびれる

私がこの記事を熱量を持って書けた理由は、なんと言っても、同じ道筋の二つの映画がこんなにも違うのか!とびっくりしたという事と、原作「パリタクシー」はもちろん面白かった、でもやっぱりどこかでパリの話という異国のお話という部分はありました。

でも、映画「TOKYOタクシー」は、どこから観ても山田洋次監督作品でした!
それはキャスティングや、物語の始まりの地が柴又であったり、すみれさんの回想で出てくる過去の物語は日本人がどこかで共感するであろうと思える導入が沢山ありました。

本当に、映画は緻密な設計図の上にさりげなく見えるように演出されていると思うんです。
この映画「TOKYOタクシー」は、なぜかは細かく書けないのですが、山田洋次監督やキャストさん&スタッフさんの映画愛が詰まりに詰まっていて、なぜか心がじんじんと震えてしまう。

そしてまた、映画「パリタクシー」も優しさが溢れていました。
なので、結局両方素敵な作品でした。

お勧めです。是非、観てみて下さい。
「TOKYOタクシー」の詳しいレビューはこちらから↓

合わせて読みたい

原作があってリメイクされた作品、結構沢山ありますよね。
そんな中でも映画好きの私のお勧めがあります。

2014年に安藤サクラさん主演で大人気の伝説的日本映画「百円の恋」を中国の国民的コメディアンで女優のジア・リンさんが監督・主演を務めてリメイクした作品。ご存じですか?

その作品についてはこちらにまとめてみました↓
こちらも、元の映画もリメイクもどちらも面白いです。

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このブログは、元オリーブ少女、カフェ好きな“おひとりさま”尚美が書いています٩(ˊᗜˋ*)و
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