ピナ バウシュ「春の祭典」生で見た感想

ライフ

PARCO presentsのピナ・バウシュ「春の祭典」、「PHILIPS 836 887 DSY」/ ジェルメーヌ・アコニー「オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ」来日公演(公演期間:2024年9月11日(水) ~ 2024年9月15日(日))見てきました!!!

ずーっと、ずーっと、一度生で観たかったピナ・バウシュの作品
今回、1986年に日本で初めて上演されてから38年たってアフリカンダンサー達により上演される”春の祭典”見てきました。

どうしても観たくて(以前生前のピナ・バウシュさんの公演を後から知り、なぜ観なかったのかと後悔したので)、S席17,000円、高い!高い過ぎる、と何回もチケットページを閉じましたが、高過ぎるけど…観たい!!!という事で、清水の舞台から飛び降りる気持ちでチケット購入して行ってきました。

この記事最後まで読むとどんな人に役立つ?

ピナ・バウシュの作品はチケットが高額な事が多いですが、生で観るべきか、後々何かの情報か写真で見ればいいか悩んでいる人の決断の材料に。

ピナ・バウシュの作品を全く知らないけどにわかでもいいから少し知っておきたいという方に。

ピナ・バウシュさんがどんな気持ちで創作をしていたかを知りたい方は最後の項目「2007年 第23回京都賞を受賞された時のインタビューが深い」だけでも少し手がかりになります。

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”春の祭典”とはどんな作品?

『春の祭典』は1975年に作られた作品で、
もともとロシアの作曲家ストラヴィンスキーが1911年に作ったバレエ音楽。

このピナ・バウシュ「春の祭典」は「豊穣を願うため犠牲として選ばれた女性が死に至るまで踊り続ける」というストラヴィンスキーのコンセプトを忠実に再現したものらしい。

全体と個人、残虐性と麻痺、陶酔と恐怖などのテーマにしたという作品を見て、真ん中で踊る女性の恐怖がゾワゾワと伝わってきましたピナ・バウシュさんの作品は舞台上に土や水、植物や動物などを大胆に取り入れた舞台美術となる事も有名ですが、今回はステージ上に大量の土!?が敷き詰められていた。

これは、踊りが進む中で、なぜこの土が必要だったのかが心底分かってくる。その足にまとわりつく砂?土?に足を取られながら一心に踊るダンサー達の熱気にじわじわと感動した。

そして、こんなにまで大変な準備が必要だったであろう作品をここまでして海外にまで持って来てでも上演したい!と思い、そしてこの熱量を持って上演し続ける程“作品”に込められた想いと、それを受け継ぎたい、再演したい、踊りたいと人々を惹きつけ、そしてそれを観たいと聴衆を惹きつける物って何なんだろうと、その根源みたいなものの尊さを感じた。

そして不思議なのが、これは個人的な体験ですが、それを観ながら自分が過去に出会った人生をかけて表現してきた人達の事を思い出してしまった。


 ピナ・バウシュさんの作品は、現代に生きる人々の普遍的な問題(男と女、個人と社会、自然と人間の関係や孤独など)を、言葉ではなくダンサーの内側からの叫びとなって肉体から放たれる一種の熱量であろ、それが恐ろしく尋常ではないのが特徴だと思う。
今作も後半になるにつれその生々しい狂気と、生への祈りのようなダンスが印象的だった。

新しいアプローチ色々

今回の公演では『春の祭典』以外の2作品も興味深かった。

ピナ・バウシュさんが、振付家としての最初期に創作、自らが踊った貴重なソロ作品「PHILIPS 836 887 DSY」をピナ・バウシュ・ヴッパタール舞踊団のゲスト・ダンサーとしても知られるエヴァ・パジェさんが踊られました。

こちらは冒頭に上演されましたが、初めは今まで自分が想像していたピナ・バウシュさんの群舞とは違い、振付家としての出発点に触れる事ができて興味深かったこちらのダンスは実はピナ・バウシュ・ファンデーションのサイトで貴重な動画がサイトでも公開されている。

もう一つの作品はピナ・バウシュ・フェローシップを通して、後進ダンサーの育成にもあたり、ピナと深い親交を持っていたセネガル系フランス人ダンサー、コレオグラファー、教師でもある振付・出演:ジェルメーヌ・アコニーさんの作品「オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ」

ステージ上には誰かの部屋を思わせるクッションや、リラックスした雰囲気が漂う所から、だんだん何かの儀式のようなものになり、そして大スクリーンに映し出される映像から大自然の香りを感じる不思議な体験だった。

この作品でも花びらや砂が使われているが、3作品を通じて感じたのが壮大な西部劇の実写映画の中にいるような不思議な感覚だった。

そこには今の日本の東京の近代的なホールという空間ではなく土の匂いと太陽の降り注ぐ大地、汗をかき必死で踊る人間の肉体と、繊細な心が自らの道を探し歩んできた不思議な魂の旅を思い出させてくれるような異空間にいるような体験だった。

休憩時間の間(2作品目が終わった後)に、舞台上に相当な量の土?が運び込まれ、数十人のスタッフがそれを舞台上に綺麗にならしていく様子もなんだか凄かった。(これ色んな方がXで発信してます)
こんもりと盛られた土をならす様子を観ながら、(ちょうどそれは“春の祭典”の準備だったので)ここまでして伝えたい“何か”って何だろうとワクワクした。

私は公演を観てから知りましたが、今まではパリ・オペラ座バレエ団やイングリッシュ・ナショナル・バレエ団が、ピナ・バウシュ版「春の祭典」を上演していたけれど、今回の公演は古典的なダンスのトレーニングだけを受けたダンサーではなく、アフリカの伝統舞踊や、コンテンポラリーダンス、ヒップホップなど、全く異なる経験も持つダンサー達が多く参加されている所も見所だと、ピナ・バウシュ・ファンデーション 創設者で理事であるサロモン・バウシュさんが語られていました。

その様子はピナ・バウシュ「春の祭典」リハーサル メイキング映像(PARCO STAGEさんの公式YouTubeチャンネル)でも観られます。

ピナ・バウシュさんの魅力を知る入口

その他、生前のピナ・バウシュさんの創作の過程が垣間見れる作品として

映画『ピナ・バウシュ 夢の教室』

40人の若者が、ピナ・バウシュさんの代表作「コンタクトホーフ」の舞台に立つまでを追ったドキュメンタリーですが、生前のピナ・バウシュさん自身の優しく寄り添いながらその人々の中から何かを見出し形にしていく姿に感動します。これは以前はDVDが販売されていましたが少し手に入りにくそうです。これは私は持っていますが本当に愛が溢れていて感動的です。

もう一つは鉄板ですが
長年にわたってピナ・バウシュさんと交流があったヴィム・ヴェンダース監督の

映画「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」(Pina)

こちらも中古品しか出回ってなさそです。

2007年 第23回京都賞を受賞された時のインタビューが深い

 実は、演目を見ていて、こんなに複雑な構成、長丁場のダンス、どうやって考え出すのだろう?と凄く興味を持ちました。
今、日本で自分がメディアを通してよく目にする群舞は、いわゆるビシッと揃っているダンス。エクザイル、BTS、ジャネットジャクソン(古い?)、など息が揃っている美しさとカッコ良さですが、ピナ・バウシュさんのダンスは心をノックしてくる場所が全く違う。
(過去に映画『ピナ・バウシュ 夢の教室』を見ていたのでなんとなくは想像していましたが…)

色々調べる中で、2007年に「そもそもなぜ自分は活動するのか」という問いに向き合わされたとピナ・バウシュさんご本人がインタビューに答えている第23回京都賞を受賞した時のとても貴重な動画を見つけました。

京都賞とは、京セラ・第二電電創業者である稲盛和夫さんが約200億円の私財を投じて作られた稲盛財団が科学や技術、思想・芸術の分野に大きく貢献した方々に贈られる日本発の国際賞。3つの部門の受賞者には、メダルやディプロマのほか賞金1億円が贈られるというもの。)

京都賞 思想・芸術部門を受賞したピナ・バウシュさんがインタビューの中で0から1が生み出される瞬間について話されていて、とても誠実で率直な言葉に胸打たれます。

〈創造性の維持について〉の問いの回答を要約すると…
それは誰からも助言のない状態で、自分自身の中に見出すものであり
誰の中にもあるもの、よく見ていても見えなくなってしまうけれど
焦らずに見つめ続ける事が大切という事を語られています。

インタビューの内容がとても心を揺さぶられたので
以下、動画のメッセージを自動翻訳した物を書き起こしてみました。

第23回(2007)京都賞 思想・芸術部門を受賞したピナ・バウシュ氏からのメッセージ映像より書き起こし

〈創造性の維持について〉※とても長いので、以下が全文ではありません。

ピナ・バウシュ氏
「私に分かるのは、とにもかくにも修練は非常に大切だということです。
感情やアイディアを何らかの形に転換させるのは簡単ではありませんが

私にはときどき何かとても小さなものが生まれるのが見えるときがあります。

突然小さなものが見えるのですが何なのか分かりません。
いつの間にかそこにある「何か」はまるで小さな鍵のようで灯された灯りのようです。
その「何か」を理解するため自分の中で対話をします。
するとそれは急にひとりでに膨らんでいくのです。

まるで冒険のようです。例えようがないのです。

アイディアは浮かびますが、それに基づいて仕事していてもいつのまにか消えてしまいます。
大切なのは大いに信頼する気持ちを持ち、せっかちにならないことです。

まずは自身の感情に耳を傾けなければならないのです。

小さな明かりが灯りエネルギーや意欲がうまれ、そして突然次の段階へと導かれます。
日常の中でこうしたアプローチを繰り返し試みるのです。

非常に難しく時には恐ろしくもあります。」

〈若者へのメッセージ〉以下が全文ではありません。

ピナ・バウシュ氏
「本当に自分がしたい事は何かを心にじっくり聴く必要があります。
誰からも助言してもらえません。

自分に正直であれば、私達が共通して持つ「何か」に出会えるからです
それは自分自身の中にしか見つけられないと思います」

公開されている動画はこちら↓※全文が知りたい方向け


InamoriFoundationさんの動画を引用させて頂きました”
第23回(2007)京都賞 思想・芸術部門を受賞したピナ・バウシュ氏からのメッセージ映像

その他、DVDなどで手に入りそうなものは、「One Day Pina Asked」というインポート物のDVDを発見しました!5週間のヨーロッパ・ツアーでのカンパニーのリハーサルとパフォーマンスを収録したものらしいです。こちら↓


One Day Pina Asked [DVD] [Import]

大好きなピナ・バウシュさんの作品、まだまだ勉強していきたいです。

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